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10月, 2015の投稿を表示しています

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑭ 問題解決のための戦略

(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介しています。今回紹介するのは「問題解決戦略」です。)
1.本当の原因ときっかけの区別を
アメリカの精神科医で境界性パーソナリティ障害に効果が高い治療法である「弁証的行動療法」を生み出したリネハン博士は、「問題解決戦略」を柱に立てました。これは「認証戦略」と並ぶ重要な柱です。
まずリネハン博士が着目したのは、境界性パーソナリティ障害の人は「本当の問題」と、「きっかけに過ぎない問題」を取り違えているということです。
一例ですが、「彼にメールを送ったのに、一日待っても返事がなかった。だから彼とは終わりであり、もう自殺するしかない」。そう思いこんでパニックになって怒りをぶつけている女性がいるとします。
確かに彼からメールが来ないことが、問題の発端です。彼女はそれが原因だと信じています。でもそれはきっかけに過ぎないのです。
というのも問題には二種類あるからです。一つは、目の前に生じたトラブルであり、不愉快でストレスになる出来事です。こうした問題は、常に発生します。誰もがそれに遭遇しています。でも普通は彼女のようにはなりません。
もう一つは、そうした問題が発生した時に、どう受け止めて、どう対処するかという問題です。本当の問題は、こちらにあります。本当に問題なのは、受け止め方でありそれへの対処の仕方です。
目先のことや、目の前のこまごました相手の対応が問題だとしている限りは、決して本質的な解決はできません。なぜなら本当の問題はもっと別のところ、つまり本人の受け止め方と対処の仕方にこそ、問題の本質があるからです。そこに目を向けて改善しない限りは、決して事態がよくならないのです。
トラブルが起きても、それに対して最適な解決方法を選択して、行うことができるようになれば、トラブルが起きること自体は問題ではないことが分かるようになります。問題は、トラブルに対する受け止め方や対処の仕方だからです。
境界性パーソナリティ障害の人は、往々にして、トラブルを過度に悲観的に受け止めて、自分が生きる価値のない人間である証拠とみなしてしまいます。こうした自己否定的な認知は、このタイプの人に共通して見られます。

2.悪い反応のパターンを見つける
受け止め方と、処置の仕方に問題があることを理解できれば、次はどういう悪い反応のパターンがあるかを…

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑬ 言葉で栄養を与える

(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介しています。今回紹介するのは言葉の使い方です。)
1.言葉で心の栄養を与える
境界性パーソナリティ障害の人を支えるうえで言葉は大変重要です。苦しんでいるご本人は、見捨てられ不安を抱え、愛情飢餓感を持っておられますので、言葉で心に栄養を与えることには、とても大きな意味があります。
①いつも寄り添っていることを伝える言葉
境界性パーソナリティ障害の人は、少しの失敗でも希望を失ったり、極端に落ち込んで弱くなったりします。励ます思い、安心させる思いを、シンプルに伝えることで、心にカンフル剤を与えることができます。
その際に必ずしも理屈はいりません。安心を取り戻させるためには、シンプルな包み込むような言葉を使えばよいのです。励ましたいという気持ちが大事です。それがあればきっと的確な言葉を、信念をこめて伝えることができます。
「大丈夫だよ」 「心配はいらない」 「きっとうまくいくよ」
まずこういう言葉で大きく包み込みます。そして安心を与えます。言った家族も、この言葉で力を得ます。
境界性パーソナリティ障害の人は、孤立無援感をもつと、思いつめて自己破壊的な行動へと駆り立てられがちです。ですから・・・、 「いつもあなたに寄り添っているよ」
という思いをこめて、シンプルな温かい言葉をつかいます。

「苦しい時には助けを求めたらいいんだよ。決して一人じゃないよ」
という思いを、言葉にしっかりと込めましょう。
「一人だけで悩まなくていいんだよ」 「一緒に考えていこうね」 「いつも見守っているよ」
いつも寄り添っていることを、何度でも伝えてください。
もし実際には物理的にいつもそばにいられなくても、気持ちは常に寄り添えますから。
②逆転の発想を盛り込んだ言葉
失敗や挫折に強くなるコツは、目の前の失敗やその結果起きることへの不安から視線をあげて、未来の可能性へと目を向けることです。
境界性パーソナリティ障害の人には、その訓練が特に必要です。
過去のことはいくら悩んでも変えられないけれど、未来はこれからの努力で変えていけることを伝えます。今までの人生を嘆くより、これからいい人生をつくっていこうと呼びかけます。
それは支援している側であるあなたの心にも呼び掛けてください。
しだいにその言葉どおりになります。言葉には実現する力があるからです。
「本当の人生は、こ…

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑫ 認証という戦略

(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介しています。今回紹介するのはアメリカのリネハン女史が開発した境界性パーソナリティ障害の人を支える基本的な方法の一つです。「認証戦略」と呼ばれています。やや専門的な支援の方法かもしれませんが、非常に重要なことを教えてくれています。)
1.ピンチをチャンスに変える受け止め方
境界性パーソナリティ障害を治療する方法として国際的に評価が確立している治療法に、「弁証法的行動療法」があります。これはアメリカのリネハン博士が開発したものですが、自殺防止の方法としても有名で、優れた成果を上げています。
リネハン博士は、自分がカウンセリングしている姿を第三者の専門家に見てもらい、どういう関わり方が効果があるのか、どういうコミュニケーションが治療的かを、実証的に根気強く研究しました。その結果、「認証」という関わり方こそ、改善への鍵を握っていることに気が付きました。
「認証」というのは、「ピンチをチャンスに変える受け止め方」です。言い換えると、「どんな悪いことや困ったことにも、必ずよい面や学ぶ点があるという発想で物事を受け止める態度」です。それを「認証戦略」と呼びます。
この世界に本当に悪いことはありません。私たちを真に害するものはないと思います。一見悪いと見えることも必ずメリットがあり、意味があるからです。その意味を見出した時に、それは成長への糧となります。それがあったおかげで、いっそう成長できたという感謝へとつながります。
その考え方を持っていると、ピンチは成長への機会と受け取ることができるようになります。成功へのばねになるのです。こういう考え方は、成功している人や困難を克服してきた人が、自然に身につけていることが多いように思います。
2.二分法的な認知を修正する
境界性パーソナリティ障害の人は、ほとんどが二分法的な認知をしています。認知というのは、物事の受け止め方ということですが、それが「善いことか悪いことか」「完璧か失敗か」「敵か味方か」と完全にどちらかに色分けし二分して受け止めてしまうのです。要するに黒か白かしかなく、灰色という中間がないのです。
この「二分法的な認知」をすると、些細な悪い点があっただけで、すべて台無しになったような気がします。ダメな点や不満な点にばかり目がいって、自分自身や周りの人や、学業…

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑪ 支持・共感・真実

(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回は基本的なコミュニケーションの方法である「支持・共感・真実」です。)
1.コミュニケーションの3つの基本
これから紹介するのは、危機的な状況にある境界性パーソナリティ障害の人を支援するためにアメリカの医療機関で開発されたコミュニケーションの方法です。それは3つの基本からなっている体系で、支持(サポート)、共感(エンパシー)、真実(トルース)で構成されています。この頭文字をとって「SET」と言われます。
「支持(サポート)」は、支援する人が、自分から力になりたいと思っていることを伝えることです。本人を気遣っているという支援者の個人的な気持ちを表現します。
「共感(エンパシー)」とは、本人の混乱している気持ちをありのままに受け入れて理解しようとする姿勢です。かわいそうという同情ではありません。相手の気持ちをありのままに理解しようという姿勢です。
「真実(トルース)」は、最終的な責任は本人しか取れないのであり、どんなに支援する側が力になろうという気持ちがあっても、他人が肩代わりして本人の人生を生きることはできないということを伝えることです。
この「真実」では「今そこにある問題を認識して、その解決に向けて具体的に何がなされるべきかを述べる」ことが中心になります。

「真実」には、支援する側が本人によって強いられている状況を、決して批判がましくない表現で、客観的に伝えることが必要です。そして本人が置かれている状況を、非難する気持ちを悲観的な思いをもたずに、冷静に客観的に伝えます。そして、その時に欠かせないのは、「それで、あなたはどうしたいの?」「どうしようと思うのかな?」という本人の主体性を重んじる問いかけです。
2.3つの要素が含まれる会話が必要
境界性パーソナリティ障害の人とのコミュニケーションには、この3つの要素が全部含まれていることが必要です。どれかが欠けていると、問題が起きます。逆にいうと、本人とのコミュニケーションがうまくいかない時は、3つの要素の何が欠けていたのかを点検すると、コミュニケーションの改善の方針が見えるのです。
「支持」の要素が十分に伝わっていない時は、「私のことを心配していない」、あるいは「私との関わり合いを避けている」と言って非難してきます。 本人が「私のことなんかどう…

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑩ 安心感を与える

(このシリーズでは、境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介しています。今回は基本的な「安心感を与える対話」です。)
安心感を与える対話
境界性パーソナリティ障害の人は「見捨てられ不安」と「愛情飢餓」を抱えています。ですから自分が失敗したり挫折したりすると、見捨てられるのはないか、愛されないのではないかという不安におそわれるのです。
本人に必要なのは、決して見捨てられないという安心感です。そして、どんな自分であっても愛されるという信頼感です。この基本的な安心感・信頼感ができてくると、症状は改善していきます。
その為には、「悪いことを話しても受け止めてもらえる」という安心感・信頼感を持ってもらえるように対応することが必要です。これが回復の鍵を握っています。
具体的にはどうすればいいでしょか。まず必要なのは、本人が自己コントロール等に失敗し症状がぶり返した時に、周囲が失望や焦りといったネガティブな感情にとらわれないようにする必要があります。ここで周囲が自分たちの期待を押し付けて、それができないと失望するというパターンで反応すると、本人はいつまでたっても回復できません。
むしろそういう時にこそ、

「苦しい自分を見せても、冷静に受け止めてもらえる」

「失敗しても、分かってもらえる」

「悪い状態の自分を見せても、裁かれないで受け止めてもらえる」

という安心感を持ってもらうチャンスだと受け止めるのです。
失敗しても冷静に受け止めることができ、なぜうまくいかなかったのかを理解して、再び三度と挑戦することができるようになると、人間として成長してゆきます。
本人がありのままの自分を見せることができて、本当の気持ちを話しても、それを受け入れてもらえ、さらに理解してもらえるという体験を積み重ねることが、回復の鍵を握っているのです。

ここで培われる基本的信頼感・安心感こそが心の基盤をつくり、情緒を安定させる基底になるからです。

<ご案内> 種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
対面のカウンセリング以外にも、電話カウンセリングやメールでのカウンセリングも受け付けています。遠慮なくご利用ください。ご連絡をお待ちしています。 電話:090-8051-8198 メールアドレス:tanemura1956@gmail.com カウンセリングルームは千葉県のJR常磐…

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑨ 自殺企図への対処

(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回ご紹介するのは深刻な問題である「自殺企図への対処の仕方」です。)
1.自殺企図への対処の仕方①
境界性パーソナリティ障害は自殺したいという気持ち(自殺企図)に苦しみ、自傷行為も頻発しがちなので、支援する側が精神的にダメージを受けやすい障害です。
この自殺企図に対しては二つの面からの対応が有効だと言われています。
一つ目の方針は、限度を超えた行動が見られて、現に自殺の危険性を感じたときは、大目に見ずに、医療機関に入院するという措置を取ることを決めておくことです。そして実際にそうなった時に、すぐに入院手続きを取ります。こうした行動制限があった方が、本人もコントロールしやすいのです。
入院すると家族から離れて自分を見つめる時間が取れます。周りのせいにしていた問題を、自分の責任として受け入れるきっかけにもなります。ですから、入院は決して悪い選択ではありません。
入院によって自分の生活や周囲の環境を新しい目で見なおし、気持ちを立て直すことも少なくありません。
ただし、家族の面会は必要です。家族と面会を重ねながら、同時に一人で見つめなおす時間もあることで、家族との関係を見直せるチャンスになります。

ただし、友人たちの面会は、時にはもっと落ち込むきっかけになることがあります。昔の自分や友人の現在と比較して、今の自分のみじめさに、うつ状態が深まることがあるからです。ですので、家族はしっかりと注意して見守ってあげてください。

2.自殺企図への対処の仕方②
もう一つの方針は、本人の「行動の奥にある思いを汲む」ことです。

自殺企図以外にも、自傷行為、薬物の乱用、万引き、性的逸脱などの「行動化」と言われる逸脱行為は、この障害に特徴的です。もちろん、本人にとって極めて危険です。

しかし、そうした行為は、本人の「自分を分かってほしい、自分に向き合ってほしい」という「必死のアピール」である側面を持っています。
ですから、問題に蓋(ふた)をして、いたずらに本人の機嫌を取ろうとするのではなく、まして見放すのではなく、たとえ苦しくても本人がこだわっている問題に一緒に向き合う姿勢をとってあげてほしいのです。

そうまでして訴えざるを得ない苦しみを持っているということを受け入れ、その苦しい気持ちを理解し、一緒に向き合っていこうとする…

境界性パーソナリティ障害を支えるために⑧ 本音を汲み取る

(境界性パーソナリティ障害の人を支える人々に必要な、知っておくべき向き合い方の原則を紹介します。今回ご紹介するのは親子の関係を改善するうえで最も重要な「言葉の奥にある本音を汲み取る」です。)
1.言葉の奥にある本音を汲み取る
境界性パーソナリティ障害の人の両親は、往々にして共感能力が不足していることがあります。つまり、子どもの言葉の奥にある本音を感じ取ることが苦手なのです。
例えば、子どもが母親に対して、

「お前なんかに、近寄ってほしくない!」
「顔も見たくない!」

と言った時、
罵声を浴びせられた母親は、子どもに関わることに自信を無くしてしまい、

「あの子が近寄ってほしくないと言ったから、自分にしてやれることはない」

と嘆いて、関わりから手を引いてしまうことがあります。
子供は言葉とは裏腹に、本当は母親に関わってほしいのです。
ところが自分の本音を汲み取ってもらえないことで、子供はさらに怒りを膨れ上がらせます。

一方母親はというと、さらに自信を無くし、子どもへのネガティブな感情を強め、子どもとの関わりから遠ざかります。

その結果、子どもの心には見捨てられ不安と愛情飢餓が、ますます強化されてしまいます。
全くの悪循環です。
気持ちを汲むことが苦手な人は、言葉を額面通りにしか受け取らない傾向があります。そして額面の言葉に傷ついていき、子どもの本音の期待に気がつきません。わが子がどんな思いで親に認めてもらおうと頑張っているか、それが結局、期待外れな結果に終わったことで傷ついているか、感じ取るのが難しいのです。
2.自分の感情に視線が向かう
親が子供の本音の感情に気がつけないとき、その理由は、「自分の感情の方に視線が向く」からです。医学博士の岡田尊司氏は、次のように指摘しています。