2015年4月28日火曜日

わかりやすい境界性パーソナリティ障害⑤・・・対策(2)心の傷を癒す





  1.深刻な心の傷


境界性パーソナリティ障害を持つ人の7割近くは、さまざまな虐待やネグレクト(育児放棄)などの深刻なトラウマ経験をしていると言われています。

約3割の人は、特にそうしたことがなくても、子育て中に親自身が大変だったり、子どもの心に共感できにくいパーソナリティの親の元で育つなどの原因で、何らかの心の傷を持つことが多いようです。


よくあるケースは、虐待やネグレクトの体験があり、それがいつまでも尾を引いて親へのこだわりとなったり、深い自己罪悪感を持ったり、愛情飢餓が抜けなかったり、親と同じことを子供にする自分に苦しんだりすることです。


そうした過去の傷は、一度過去を丁寧に思いだして、吐き出し、そこで本当はどういう経験をしたのかを洞察する必要があります。そして自分の物語に統合することです。これがうまくいくと、その心の傷は癒されます


通常、深刻な過去のトラウマ経験は、自己防衛のためにその経験が氷漬けになっていて、思いださないようにしています。何かの拍子で思いだすと、うつや恐怖を味わい、フラッシュバックではあたかも今虐待を受けているかのような、生々しい経験を味わいます。

ではいつまでも氷漬けにして、記憶の海に沈めておけばいいのかというと、氷になった心のエネルギーはつかえない状態ですので、生命力が低下したままです。

また、必死で抑圧していた記憶が、夢に再現されたり、フラッシュバックとなって出てきたり、潜在意識に押し込めたはずの記憶の奔流があふれ出して苦しむこともあります。



2.受容される経験が必要


そこで過去の記憶と向き合う必要があるのですが、この作業は一人ですることをお勧めできません。「過去」に飲み込まれていく可能性が高いからです。どうしても、話を受容して聴いてくれる人との出会いが必要だと思います。

誰にも言えずに一人で抱えていた経験を、誰かに受け入れてもらい、共感的に理解してもらうことが大切なのです。そうすれば心が楽になります。


信頼できて、決して裁かず、好奇の目を向けることもなく、どんな恥ずかしく惨めな経験を話しても、すべてを受け入れて、寄り添ってくれる人に出会うと、封印されていた記憶は、どんどん潜在意識の底から浮かび上がってくるようになります。あたかも解放される時を待っていた囚人のように、忘却の牢獄を打ち破ってひしめくように表に出てこようとするのです。フラッシュバックを体験することも少なくありません。


この時大切なことは、過去の記憶があたかも今の体験であるかのように感じられたとしても、それは過去の自分が味わった感情が、溶けだして、顕在意識に浮かび上がっているのであり、それを味わうということは、顕在意識を通過して記憶がはきだされ外へ出ていこうとしているのだと、受け止めることです。

パニックや恐怖に再び襲われているのではなく、過去に味わった不安や恐怖がどんななものだったかを、いま見て感じて味わっているのだと受け止めてください。

また、あまりに強いショック症状が出る場合は、思いだす作業を一時中断してください。自我が記憶の内容に耐えられるだけの強さがなく、支援も十分にえられない場合には、危険が伴います。



3.吐き出す


その記憶を心の外に出すためには、その時に体験したこと、思いだしたことを、さまざまな形で表現して自分の外に追いだすことです。これが吐き出しの作業です。


次に、その吐き出した経験を洞察します。これがうまくいくと、恐怖体験やパニックの体験から解放され、親や相手に対する気持ちが急速に楽になって変わります。その恐怖から解放されたということが、自分でもはっきりとわかります。


幼少期や思春期にトラウマ体験をした場合は、その年齢の自分の心が成長できなくて時間が止まり、成長が止まっている場合が少なくありません。その幼い自分を理解し共感してあげることで、その成長がとなった内なる子供が再び成長をし始めます。そうしたことが、記憶の解凍作業の中で同時に進行してゆきます。



4.不幸な経験を心のたい肥に変える


不幸な経験をする意味は何でしょうか。私は長野県の高原野菜の農家さんにで見せていただいた「たい肥」を思いだします。その農家さんは、高原で放牧された馬や牛の糞をもらってきて、たい肥にしていました。糞はもちろん臭いのですが、それがたい肥になる過程で熱が出て発酵します。

色々な雑菌が作用して発酵するのですが、一定以上に温度が上がるとその熱で雑菌だけが死んでしまいます。そして後には栄養素と、土壌を豊かにして野菜を育ててくれるよい菌だけが残るのです。臭いにおいはなくなり、香ばしい香りがします。そうしてできた肥料を施した畑は、野菜の生育が全く違います。立派で健康でおいしい野菜ができるのです。


不幸な経験は牛や馬の糞のようなものだと思います。それは臭いにおいがして、有害な雑菌もうようよいます。しかし、その糞をカウンセリングの中で発酵させていくと、心を育ててくれる「心のたい肥」に変わるのです。もはや自分が害され苦しめられることはなくなります。


もちろんある程度の時間はかかるかもしれませんが、自分が経験したことは、必ず自分の心を育てる栄養に変えてゆくことができると思います。それがその体験をした意味でもあると、その時に気が付きます。



5.過去とは「さよなら」しましょう


こうして思いだした「過去」は、カウンセリングの時を終えれば、忘れて振り返らないようにしましょう。洞察を得たら、過去は引きずらず、そこで決別するのです。つまり「さよなら」します。


過去と決別できた人は、思いだして怒りにとらわれるということがなくなります。


しかし、怒りにとらわれる人は、誰かのせいにして、当たらずにいられなくなります。これは過去を引きずっている姿です。そういう自分がいることを発見したら、「これは自分には癒しが必要だというシグナルだ」と受け止めてはいかがでしょうか。


 対策の続きはこちらです。
http://tanemura2013.blogspot.jp/2015_06_01_archive.html


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2015年4月7日火曜日

わかりやすい境界性パーソナリティ障害④・・・自分で取り組める対策(1)




 境界性パーソナリティ障害を克服するには、自分の心の内にあるものに向き合って、それを明確な形でとらえることが必要になります。


この障害を持つ人は、「良い自分」と「悪い自分」がばらばらになっているのに、それに気がついていません。あるいは「自分」と「他人」の生き方や感じ方を同じもののように見なしてしまうため、無意識のうちに相手をコントロールしようとします。そして、そのことにも気がついていません。その結果、激しい不安を持ったり、期待通りに相手が動いてくれなくて激怒したりして、苦しみ落ち込んだりします。


こうした苦しみから脱却するためには、まず自分の心の真実に気がつくことが大切です。そこが出発点です。自分の心に向き合い、感情に向き合ってこそ、それをコントロールできるようになるからです。その為のステップを紹介します。
 

1.「大人」と「子供」の二つの自分がいることに気づく

境界性パーソナリティ障害の人の心には、「大人の自分」と「子供の自分」が同居しています。

「子供」の部分は、見捨てられることを極端に恐れたり、愛されたい、すべてを自分の思い通りにしたい」という幼児の心さながらの自分です。


ちょっとしたきっかけで「子供」の部分に心が占領されやすいのが、境界性パーソナリティ障害の人の特徴です。だから感情のコントロールが難しくなるのです。


まずこの二つの自分がいるという真実に気がついて、両方とも自分であると受け入れること。そこから心の回復が始まります。


あなたのなかの「子供の自分」は、次のように叫んでいませんか?


「抱きしめてほしい」


「自分と同じ道を歩んでほしい」


「もっと愛情を注いでほしい」


「見捨てられたくない」


「すべて思い通りにしたい」


「ちやほやされたい」

それに対して「大人の自分」は、次のような思いや特徴を持っています。


「こんなことで見捨てられないということを知っている。」


「我慢できる」


「自分とまわりは違うことを理解している」


どちらも自分であることを認めたうえで、「大人の自分」にもっと耳を傾け、「大人の自分」を育てていきましょう。


2.問題行動を振り返り自分の行動パターンを知る

まず自分の感情の波の「パターン」を知る必要があります。そこで自分がしてしまった問題行動(行動化)を振り返ります。そのためには、問題行動がいつ起きたかを書きます。

①問題行動が起きた時は、いつですか?


(例)「201533日深夜」


発生した日時を記録することで、どのくらいのサイクルで起きてくるのか、どの時間帯に置きやすいのかを把握します。

②何がきっかけになりましたか?


(例)夜中に急に寂しくなって夫に話しかけたが、かまってくれなかった。


恋人、家族、友人・・・誰のどんな言葉や態度がきっかけになることが多いのかを知ります。

③感情がどう移り変わりましたか?


(例)さみしい→怒り


感情の移り変わりをとらえましょう。

④よくやる行動パターンはなんですか?


(例)「行動・・・夜中にお酒をがぶ飲みした」「睡眠薬を大量に飲んだ」「怒って物を投げつけた」、このほかリストカットや大量服薬、家具の破壊、過食など、どういう行動化が現れるかを把握します。

⑤行動した結果、あなたはどうなりましたか?


(例)「その後、救急車に運ばれ、気がついてから自己嫌悪で落ち込んだ」「その後、吐き気がして、よけい惨めになり、最悪な気分、すべてが虚しい」


行動した結果、どんな気持ちになったかまで振り返ります。

⑥自分に問いかける「それで問題は解決したのかな?」


行動化は一時的に気分を紛らわせてくれますが、そのあとに後悔や、罪悪感、自己嫌悪など、いやな感情が残ったり、よけいに不安や雑某が強くなったりします。一つ一つの事例で「行動化しても問題は解決しない。」ということを、はっきりと認識します。

以上二つの方法をご紹介しました。

これはいずれも自分の感情や気分、思考をコントロールできるようになるための、とても大切な最初のステップです。心をコントロールするには、まず心に浮かんでくる感情や気分、思考といったものをきちんと見つめて気づいていることがとても大切です。

それによって感情に振り回されてしまわない自分を創っていきましょう。

最初の一歩は、カウンセラーの支えがあると歩み出しやすいと思います。

助けが必要だと思ったら、専門家の支援を求めることをためらわないでください。


対策(2)に続く。

 http://tanemura2013.blogspot.jp/2015/04/2.html


(参考図書)市橋秀夫監修『境界性パーソナリティ障害は治せる!正しい理解と治療法』大和出版

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