2015年1月27日火曜日

(投稿)子供を通して学んだこと



(紹介)カウンセラーの「大」さんが昨年秋に送ってくれていた投稿を紹介します。今は受験の最中という家庭も少なくないと思いますが、受験に限らず親子の関係について、なかなか深い示唆に富んだ気づきを綴ってくださいました。それはすべてをつながりの中で見てゆこうという見方であり、子供に起きている現象は、自分が蒔いた種が育っているという見方です。そして子供の苦しみを、子どもの視線に立って理解していこうという態度の大切さです。


(投稿) 

1.受験目前、親のイライラ

秋も深まり、長男の受験勉強も、いよいよ大詰めになってきました。
そろそろラストスパート・・・、といいたいところですが、
長男はいたってマイペースで、「焦る」という言葉を知らないかのようです。
暇さえあれば、勉強そっちのけで、大好きなプラモデルをいじっている始末。
毎日のように、妻の小言が家の中に響き渡ります。
私も、居ても立ってもいられず、彼に説教じみたことを言います。
ですが、「わかったよ・・」の一言で、なかなか動こうとしません。
10回ほど小言を繰り返して、ようやくイヤイヤながら机に向かいます。
本人が行きたい高校へ入学するには、現状では偏差値が足りません。
ガムシャラに勉強しないと、試験に落ちてしまうことは目に見えています。
しかし、なぜ、マイペースすぎるのか・・・。
精神的に問題があるのではないのか・・・。
そのようなことを考えながら、悶々とした日々を過ごしていました。

そんな中、ある方から言われた言葉を思い出しました。

目の前に現れた現象を、自分の結果から出たとしたときに、あなたはどう捉えるか。」

自分の周りに起こる出来事は、自分とまったく無関係ではありません。

自分から発生した事象が、回りまわって自分に返ってくるように、必ず何らかの縁が存在します
自然界において、作用と反作用は同時に発生するように、何らかのアクションを起こせば、必ず見えない部分で何らかの反作用が働いています

自分とその周りはセパレート(分離)しているように見えて、実は密接につながっています。

自分とそれ以外の存在を切り離して認識していれば、当然のように、自分に襲ってくる現象は自分以外の何物かが原因で発生している、という認識をしてしまいます。

2.共感的に理解するために


長男が自分たちの言うことを聞かない(自分たちの思うとおりにならない)原因は長男にある、という見方をしていた自分に気づいたときに、心底「しまった~!」という思いに駆られました。

「長男に現れた現象を、自分たちが作った縁の結果から出たとしたときに、あなたたちはどうとらえるか。」

そうしたことを問われているような気がしました。


「人同士は、それぞれ別個の個性を持った存在であると同時に、互いにつながっている存在である。妻や長男を互いにつながっている存在であると見ていたか? 他人ならまだしも、身内ではないか。その存在をどう見ていたか?」

そうした意識を持って、長男を見ていったときに、また違った視点が見えてきました。

私や妻の発した言葉に傷ついている姿。
勉強をしなければならないとわかっていても、どうしても目の前の誘惑に駆られてしまう自分と、そのふがいなさを責め続けている姿。
父や母に対する怒りと、自分の情けなさに対する怒り。

自分と彼を別個の存在だとせず、つながった存在であるとイメージしたうえで、彼を裁こうとせずに、彼の心の中に入ってみると、実はまったく違った見方ができることに気づきました。

ああ、きっと彼もつらいのだろうな・・・。
そう思うと、思わず涙があふれてきました。

人同士に限らず、この世界はそれぞれが別個の存在であるように見えながら、すべてつながっている存在です。
その全ての存在に対してこのような思いを発することができたなら、この世界は今までとは全く違った見方ができることでしょう。

全ての存在が理解し合えるようになるには、こうしたことが必要なのではないだろうか。

長男を通して、深い学びを得ることができました。(大)

<ご案内>
種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
直接お会いする対面カウンセリングとともに、電話カウンセリングやメールによるカウンセリングも行っています。相談してみたいと思われるかたは、お気軽にご連絡ください。
初回30分までの電話相談は無料です。
℡: 090-8051-8198 
メール: tanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは、JR常磐線・我孫子駅(千葉県)南口から徒歩10分にございます。

2015年1月25日日曜日

境界性パーソナリティ障害9…特徴(6)自己を損なう行為にのめり込む



①間接的に自分を損なう行為



自分の身体を直接傷つけるだけでなく、間接的に自分を損なう行為にのめりやすいのも境界性パーソナリティ障害の特徴です。


アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル(いわゆる診断基準「DSM-Ⅳ」)には、
4)「自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの」と書いてありますが、そこには例として「浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い」を挙げています。

間接的に自分を損なう行為で典型的なものは、アルコールへの耽溺や薬物の乱用です。場当たり的なセックスやスリルだけを追い求める恋愛、万引きも含まれます。どちらかといえば女性によくあるのは過食や買い物依存、どちらかというと男性によく見られる命の危険と背中合わせのスポーツや無謀運転への熱中も、それに当たります。

通常の場合、人は衝動をコントロールしたり、欲望をその場で満たすことをおさえ、それを先延ばしすることができます。それは長い目で自分を損なわないように配慮するからです。

ところが、こうした衝動を抑えたりコントローすることが困難な人もいます。

特に長い時間、不安や空虚感を感じて苦しんだ場合は、目の前の楽しい活動をすることは、このうえない気分転換になります。

境界性パーソナリティ障害の人の場合、心の長く空虚感を抱えており、また気分が変わりやすく落ち込んでうつ状態にあることも頻繁に起こります。

そうした場合、むちゃ食いや嘔吐、見境のない性交渉、万引き、脅迫的な買い物、飲酒、物質依存等の衝動的な行為によって、どうしようもない空虚感を満たしたり、あるいは自分が自分であるという自我同一性を確認しているように見えます。

また、万引きや脅迫的な買い物、むちゃ食いは、境界性パーソナリティ障害の人が抱えている深刻な愛情飢餓を癒そうとする行為でもあるようです。

人は幼い時に母親から母乳などを与えられてきました。それはたんなり摂食行為ではなく、愛情と安心を与えてもらっていたのです。何かを買ってもらうことも、愛を与えてもらっていることを意味しました。ですから、過食や万引き、脅迫的な買い物は、愛情飢餓を癒すための代替行為となるのです。

つまりそれによって深刻な愛情飢餓感を癒しているともいえるのです。裕福な家の子が、使い切れないほどの日用品を買いこんだり、繰り返し万引きしていたりすることがあるのも、こうした理由かだと言われています。

②強烈な自己否定感

しかし、こうした行為は、確実に自分を損なってしまう行為です。ゆえに、その根底には自己破壊衝動があります。

自己破壊衝動の理由は、深い自己否定の感情と罪悪感です。

「愛を与えられない自分」=「ダメな愛を受けるに値しない自分」
という強い思い込みが、そこにはあるように思います。

 精神科医の岡田尊司氏は、境界性パーソナリティ障害の人には「自分という存在を跡形もなく消し去ることを、心の底から望んでいる」ことがあるといいます。

自殺企図、自傷行為、間接的な自己破壊、これらの奥には根深い自己否定感から来る自己破壊衝動があるのです。

こうした自己否定感は、しばしば薬物乱用や性的な無軌道、命知らずの行動、窃盗のような法律を犯す行為に走らせます。「自分を値打ちのない存在と思っているから、自分をとても安っぽく扱ってしまう」のです。

また、境界性パーソナリティ障害の人は、そうした自己否定感見捨てられ感のために、心の空虚さを感じたり、気分が沈みやすくなります。

それを防ぐために、「常に自分を紛らわす刺激剤」を必要とします。自傷行為や自分を損なう逸脱した行為が、彼らの「気分を高揚させ、落ち込みや空虚感から救っている」のです。

強烈な自己否定感は、強い見捨てられ感と並んで境界性パーソナリティ障害を理解する最重要のキーワードです。

彼らは自分が嫌いです。「自分という存在を、つまらない、劣った存在と過小評価するばかりか、しばしば、汚らわしい、醜い、情けない、存在する価値のないものと考えている」のです。

どうしてそうした自己否定感が心の中に根付いたかといえば、幼いころに、愛情の充足や安心が脅かされた体験に根差していることが多いのです。

ですから、幼少期に形成できなかった基本的安心感を、どこかで作り直す経験が必要になるのです。

 (参考図書)岡田尊司著『パーソナリティ障害』PHP新書

<ご案内>
種村トランスパーソナル研究所ではカウンセリングを行っています。
直接お会いする対面カウンセリングとともに、電話カウンセリングやメールによるカウンセリングも行っています。相談してみたいと思われるかたは、遠慮なくご連絡ください。
℡090-8051-8198 
(メール)tanemura1956@gmail.com
カウンセリングルームは、JR常磐線・我孫子駅(千葉県)南口から徒歩10分にございます。

2015年1月22日木曜日

境界性パーソナリティ障害8…特徴(5)繰り返される自殺企図と自傷行為




①自殺企図


境界性パーソナリティ障害の重大な特徴となる症状は、自殺企図自傷行為を繰り返すことです。自殺企図というのは、文字通り自殺を企てることです。自傷行為はリストカットやアームカットなど、自分で自分の体を傷つけることです。


まず自殺企図について説明します。


境界性パーソナリティ障害の人の自殺率は9%と言われていますが、診断基準をすべて満たしている重度のケースでは、36%にのぼるという調査結果もあります。ですからこの問題は深刻です。


このタイプの人の自殺企図には確かに、周囲をコントロールしたり、周囲の気を引くという動機も含まれています。ですが、それだけではありません。この問題を専門的に研究したリネハンという心理学者は、彼らにとって自殺は、圧倒的でコントロールできないような感情の痛みに対する解決策と見なされていると指摘しています。
 

「自殺の脅しも含め、自殺行為は、周囲の行動を引き出す上で非常に効果的です。感情的な苦痛を減少させるために効果的な、救いの手をもたらしてくれます。多くの例では、このような行動は、他人の注意を引きつけ、自分の感情的苦痛を和らげるためにできる唯一の方法なのです。」(マーシャル・M・リネハン)

 
自殺行為やリストカットなどの自傷行為の後、いったん症状が収まり落ち着きます。その理由には「自分の中に溜まっていたものを、そうした行為によって放出した一種のカタルシス効果」が働くのと、周囲の関心や心配が自分に注がれ、「愛情欲求が一時的に満たされる」からです。


ただし、何度も繰り返されえるので、周囲も「またか」と思いそれほど注意を払わないようになると、本当に自殺に至る危険があるので、決して安心はできません。
 

②自傷行為


自傷行為は、リストカットやアームカットが有名ですが、自殺目的ではない自分を傷つけるあらゆる行為が含まれます。たとえば、自分を火傷させたり、骨折させたり、頭を打ちつけたり、針で刺したり、皮膚を引っ掻いたり、髪を引き抜いたりと、さまざまな方法があります。


境界性パーソナリティ障害の方の7割以上には自傷行為の経験があると言われています。

自傷行為というのは、圧倒されるような感情的苦痛(羞恥心、怒り、悲しみ、見捨てられ感情など)を開放したり、処理するために用いられる対処方法です。


リストカットやアームカットなどの自傷行為をすることは、本人にとって大きくは二つの意味を持っています。


一つ目は、それは周囲に自分の苦しさを気づいてほしいというサインです。

もう一つは自傷行為それ自体から生じるカタルシス効果(心の奥にあるものを吐きだしてすっきりする)です。


すっきり感には生理的な根拠もあります。実は、自傷行為によって、ベーター・エンドロフィンとして知られている、麻薬のような働きをする化学物質が脳から放出されるのです。この化学物質は幸福感を感じさせてくれます。


以上のような理由から、自傷行為それ自体への依存が生まれやすく、繰り返しやすいのです。

境界性パーソナリティ障害の人が自傷行為をする理由を、さらに細かく見てみましょう。次のようなものが理由として含まれます。


・麻痺した感情や空虚感を和らげ、生きていることを実感するため。

・さらに感情を麻痺させるため。

・他者への怒りを表現するため。

・自分で思うほど自分が「悪」ではないことを、どうにかして証明するため。

・ストレスや不安を和らげるため

・苦痛をコントロールできるという感覚を得るため

・現実感を取り戻すため

・「現実」を感じるため

・感情的苦痛を他人に伝えたり、援助を求めるため

・身体的な痛みを感じることで、感情的苦痛や不満、その他の否定的感情から解放されるため

・自分に罰を与えたり、自己嫌悪を表現するため(虐待の被害者に多い)
 

境界性パーソナリティ障害の人は、強い自己否定感情罪悪感を抱いている人が少なくありません。そのため、自分を傷つける行為、自分に罰を与える行為によって「自分を罰し、痛めつけたから、もう少し生きていてもいい」という心理的な取引が行われ、「こんな自分がまだ生きている」という極度の自己否定感情を一時的に軽減するのに役立っているという側面もあります。


③解離状態


自傷行為や自殺企図に走る瞬間は、通常の意識状態ではないことが少なくないようです。特に、視野が狭まり、自我のコントロールが弱まった解離状態がよく見られるのです。


解離状態というのは、自分の意識が肉体から一時的にはなれて自我でコントロールできなくなることで、その間の記憶や意識の連続性が失われています。解離状態ではしばしばのりうつりの現象がみられて、自分が自分でない状態(自我の同一性が失われた状態)であることも少なくありません。


したがって、繰り返し行われるので「またいつものことだ」と周囲の人が油断していると、取り返しのつかない結果を招く危険性があり、注意が必要です。

境界性パーソナリティ障害の人は、潜在意識と同通している度合いが通常の人に比べるとはるかに高いという特徴があります。それゆえに、のりうつりの影響を直接的に受けやすいのです。自殺した人の想念などをキャッチしてしまうと、まるで自殺者の霊に取りつかれたようになり、自殺への衝動が激しくなります。「殺してやる」「死ね」などの声がストレートに聞こえる場合も少なくありません。それはのりうつりの想念をキャッチして、声として聞こえている状態です。解離というのは、のりうつりのおきやすい状態です。だからこそ、自殺企図に対しては、常に注意深く見守ってあげることが必要です。


今回取り上げた特徴は、診断基準の「DSM-Ⅳ」には(5)「自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し」とあることへの解説です。

続き(9)はこちらです。

 http://tanemura2013.blogspot.jp/2015/01/6.html
(参考)岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』幻冬舎新書)
 
 

<種村カウンセリングルームの連絡先>

090-8051-8198


住所:千葉県我孫子市白山1-7-7 白山シャトー202

2015年1月20日火曜日

境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない




 ①感情がコントロールできない

 

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。

 
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。
 
もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。
 

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。

この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。
 

②怒りの奥にある生き残り戦略と恐怖心
 

この人たちは心にとても深い傷つきを持っています。それゆえにとても傷つきやすいし、傷つけられたことに対して激しい怒りにとらわれやすいのです。それまで物静かでおとなしかった人でも、自分の自由にならない状態が現れるや否や、ガラッと態度や表情を変えて、かんしゃくを爆発させることがよくあります。
 

怒りを向ける相手は決まっていて、親しい人、依存している人、甘えを許してくれる人です。「母親や妻に対してだけ、すぐに手が出てしまう」という男性も少なくありません。

どうして自分を分かってくれないんだという苛立ちや、自分を守りたいという気持ちから、居丈高になったり、過度に攻撃的になりやすいのです。思春期の子供であれば、欲求を聞き入れられないことに怒り、家のものを壊したり、母親に物を投げたりすることも少なくありません。普段は穏やかで心の優しい子供であるのに、こういう時は恐ろしい形相をして母親に挑みかかります。
 
境界性パーソナリティ障害のある女性は、自分の状態をこう説明しています。

「何かのきっかけがあれば、まったく冷静な状態から、一瞬にして、怒り心頭で激怒してしまうの。あたかも包囲されて、皆が私をトラブルに巻き込むために、あえて私の怒りを煽っているかのように感じるのよ。この気質は、子どもの頃に受けた虐待に起因していると思うの。ある時、もう親からの虐待を受ける必要はないと決心したわ。怒りを相手に返すことが、生き残る手段となったのよ。」

生き残りの戦略として激しい怒りで対応することを学習し、それが無意識的なパターンになったというのです。しかも、「本当は、みんな私を傷つけてきたんだから、みんなにも傷ついてほしいと思っている」と告白しています。

 
こうした怒りの奥には傷つけられることへの恐怖があります。だから、怒りのダムが決壊している時には、「君は怒っているんじゃなくて、怖いんだね」と夫が言ってくれることが、唯一、助けになるという女性がいます。その瞬間、怒りが消えて、再び恐怖を感じることができるからです。

感情は第二感情であると言われますが、恐怖という第一感情が、怒りという形で噴出しているのです。境界性パーソナリティ障害の人は心の奥では、見捨てられ、愛を失うことに怯えているということを理解する必要があります。

 
この症状は、「DSM-Ⅳ」の診断基準には、「(8)不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難」とあります。具体例として「しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す」ことが挙げられています。

境界性パーソナリティ障害8に続く。

(参考図書)ポール・メイソン&ランディ・クリーガー著『境界性人格障害=BPD』星和書店

 

<連絡先>

種村トランスパーソナル研究所(心理カウンセラー・種村修)

電話:090-8051-8198


 

2015年1月19日月曜日

境界性パーソナリティ障害6…特徴(3)ムード・スウィング




①めまぐるしく気分が変わる

 
境界性パーソナリティ障害の人は対人関係が極端に変動し不安定なだけでなく、本人の気分・感情も大きく変動するという特徴があります。

ハワイに行くと、お天気が短時間で大きく変動して、晴れていたと思うと突然、猛烈なスコールが降ることがあります。このタイプの人の気分や感情の変動も、ハワイの天気によく似ています。つまり晴れ渡って青空が見えていたかと思うと、突然曇って大粒の雨がシャワーのように降ってくる。しばらくすると嘘のように雨が上がり、青空が見える、という具合です。

「気分がよく、希望が感じられ、何もかも楽観的で前向きに考えられる」と気がすこし続くと、突然、「最悪の気分で、すべてが駄目に見えて落ち込んでいる」という具合です。最高と最低の状態を往復し、気分が目まぐるしく変わります。そのきっかけも些細な傷つきなどで、あっという間に絶好調から絶不調に揺れるのです。

境界性パーソナリティ障害の人は、潜在意識と同通している度合が強く、いわゆる霊的な感覚が発達しています。そのために、些細な気分の変化や、人の些細な一言で、一気に感情がぶれていくのです。肯定的な思いを持っている時は非常に幸福感が強かったのに、何かの拍子でネガティブな感情に入ると、底なし沼のような暗い暗澹たる感情に支配されます。その落差は激しく、しかも比較的短時間で変化するというのが、境界性パーソナリティ障害の特徴です。
 
境界性パーソナリティ障害を抱えた妻を持ったJさんは、「結婚生活は、つかの間天国にいるかのように感じたかと思えば、その次は地獄だよ」といいます。

「妻の気分はコロコロ変わるんだ。彼女を喜ばせようとしたり、けんかになることを避けようとしてビクビクしているようなものだよ。話すスピードが速いとか、声のトーンがおかしいとか、表情が変だとかで、喧嘩になるのはごめんだからね。彼女がしてほしいと言ったことをその通りやっても、彼女は腹を立てるんだ。彼女が『一人になりたいから子どもをどこかに連れて行ってくれない?』と言ったことがあったよ。それで僕が子どもを連れて出かけようとすると、彼女は僕の頭めがけて鍵を投げつけて、『私のことを憎んでいるから家にいられないんでしょ!』と責めたんだ。でも僕と子どもたちが映画から帰ってきた時には、彼女は何事もなかったかのようにふるまっていた。」

 
ムード(気分・感情)が激しくスウィング(揺れる)することをムード・スウィングと呼びますが、それが境界性パーソナリティ障害の人の特徴です。2~3時間で変動することもあれば、まれに2~3日のこともあります。いずれにしても短期間で変わります。

これは特殊なうつ病を併発しているとも言えます。うつ病でも、較的軽いうつ状態を繰り返すのを「気分変調症」、さらに過食過眠が伴って周囲に対して攻撃的になるのを「非定型うつ病」と言います。梅雨のように長期間続く通常のうつ病ではなく、熱帯地方のスコールのように短期間で変動するのが特徴です。境界性パーソナリティ障害はこれらを併発していることも少なくないのです。

 
なお、気分が変わるきっかけは、見捨てられ不安を感じさせるささいな出来事のほか、次のようなものがあげられます。

・自分がないがしろにされたと感じる

・自分の思い通りにならないとき

・疲労

・睡眠不足

・生理前

ただし、特に原因がないケースも少なくないようです。

なお極端な気分の変動という特徴は、診断基準「DSM-Ⅳ」の(6)には、「顕著な気分反応性による感情不安定性」と表現されています。そして「通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらだたしさ、または不安」という説明がついています。

境界性パーソナリティ障害7に続く。
http://tanemura2013.blogspot.jp/2015/01/blog-post_20.html

(参考文献)ポール・メイソン&ランディ・クリーガー著 『境界性人格障害=BPD』星和書店 

<提供・連絡先>

種村トランスパーソナル研究所(心理カウンセラー・種村修)


電 話:090-8051-8198