スキップしてメイン コンテンツに移動

境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない




 ①感情がコントロールできない

 

境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。

 
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。
 
もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。
 

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。

この敏感さは、境界性パーソナリティ障害の人が、潜在意識と同通しやすいこととも密接にかかわっています。鈍感な人であれば感じないので平気なことでも、潜在意識と同通して敏感な人にとっては、拷問なような苦しみを感じることがあるのです。心がむき出しになっていて、小さな刺激にも過敏に反応するのです。このタイプの人が、激しい猫舌であることも、しばしば見かけます。感覚も過敏であることが少なくないように思います。
 

②怒りの奥にある生き残り戦略と恐怖心
 

この人たちは心にとても深い傷つきを持っています。それゆえにとても傷つきやすいし、傷つけられたことに対して激しい怒りにとらわれやすいのです。それまで物静かでおとなしかった人でも、自分の自由にならない状態が現れるや否や、ガラッと態度や表情を変えて、かんしゃくを爆発させることがよくあります。
 

怒りを向ける相手は決まっていて、親しい人、依存している人、甘えを許してくれる人です。「母親や妻に対してだけ、すぐに手が出てしまう」という男性も少なくありません。

どうして自分を分かってくれないんだという苛立ちや、自分を守りたいという気持ちから、居丈高になったり、過度に攻撃的になりやすいのです。思春期の子供であれば、欲求を聞き入れられないことに怒り、家のものを壊したり、母親に物を投げたりすることも少なくありません。普段は穏やかで心の優しい子供であるのに、こういう時は恐ろしい形相をして母親に挑みかかります。
 
境界性パーソナリティ障害のある女性は、自分の状態をこう説明しています。

「何かのきっかけがあれば、まったく冷静な状態から、一瞬にして、怒り心頭で激怒してしまうの。あたかも包囲されて、皆が私をトラブルに巻き込むために、あえて私の怒りを煽っているかのように感じるのよ。この気質は、子どもの頃に受けた虐待に起因していると思うの。ある時、もう親からの虐待を受ける必要はないと決心したわ。怒りを相手に返すことが、生き残る手段となったのよ。」

生き残りの戦略として激しい怒りで対応することを学習し、それが無意識的なパターンになったというのです。しかも、「本当は、みんな私を傷つけてきたんだから、みんなにも傷ついてほしいと思っている」と告白しています。

 
こうした怒りの奥には傷つけられることへの恐怖があります。だから、怒りのダムが決壊している時には、「君は怒っているんじゃなくて、怖いんだね」と夫が言ってくれることが、唯一、助けになるという女性がいます。その瞬間、怒りが消えて、再び恐怖を感じることができるからです。

感情は第二感情であると言われますが、恐怖という第一感情が、怒りという形で噴出しているのです。境界性パーソナリティ障害の人は心の奥では、見捨てられ、愛を失うことに怯えているということを理解する必要があります。

 
この症状は、「DSM-Ⅳ」の診断基準には、「(8)不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難」とあります。具体例として「しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す」ことが挙げられています。

境界性パーソナリティ障害8に続く。

(参考図書)ポール・メイソン&ランディ・クリーガー著『境界性人格障害=BPD』星和書店

 

<連絡先>

種村トランスパーソナル研究所(心理カウンセラー・種村修)

電話:090-8051-8198


 

コメント

このブログの人気の投稿

境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。 リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

こうした極端に不安定な気持ちや言動の元にあるのは「相手に見捨てられるかもしれない」という不安です。しかも、その「不安」は、本人が思いこんでいるだけで、相手にしてみれば全く心当たりがない場合がほとんどです。そのため何を怒っているのか、見当がつきません。

境界性パーソナリティ障害の人は、大変深刻な「見捨てられ不安」をもっているのです。そのために、ささいな…

境界性パーソナリティ障害5…特徴(2)対人関係の不安定さ

①理想化とこき下ろし

境界性パーソナリティ障害の二番目の特徴は、人間関係が不安定で変動が激しいことです。
「理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係」というパターンがあるのです。


理想化」というのは、「最高だ!」「こんな人に出遭えたのは初めて!」と感じて、相手を理想の人だと思いこむことです。


境界性パーソナリティ障害を持つ人は、自分を支えてくれ、愛情飢餓を癒してくれる人を常に求めています。ですから、これはという人物に巡りあえると、急速に相手に対する期待が高まります。そして「この人こそ、自分が求めていた人だ!」その思いが膨らむと、極度に理想化したり、万能な存在であるように思いこみやすいのです。

このタイプの人は、心の深いところで母親や父親の代理を相手に求めています。ですからその欲求を満たしてくれる人に出会うと、どんどん依存を深めていきます。

さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


もし恋人関係になったとしても、この関係は長続きしません。どこかで相手が支えきれなくなるからです。相手がその人のもつ過大な期待にしり込みしたり、あるいはもう飽き飽きしたという態度を取ると、境界性パーソナリティ障害の人は「見捨てられるのではないかという不安」に捉われます。
そこで必死にしがみつこうとしたり、相手の気を引く行動をとります。

それでもさらに相手が引くそぶりを見せると、激しい失望を感じて、「裏切られた!」と怒りを感じます。そうすると、今度は相手が攻撃の対象になりかねません。


些細なきっかけで、その人の何らかの要求が満たされないと、評価が180度逆転して、罵詈雑言を浴びせることもありがちです。そして「最低!」「信じて損した」「私の時間を返してよ」という具合に、激しい言葉を浴びせるのです。言葉だけでなく、行為で迷惑をかけることもあり、相手は翻弄されていくことになります。
②アンビバレント(両価的)な感情
このタイプの人を理解する鍵は、「アンビバレント(両価的)」な感情にあります。