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境界性パーソナリティ障害9…特徴(6)自己を損なう行為にのめり込む



①間接的に自分を損なう行為



自分の身体を直接傷つけるだけでなく、間接的に自分を損なう行為にのめりやすいのも境界性パーソナリティ障害の特徴です。


アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル(いわゆる診断基準「DSM-Ⅳ」)には、
4)「自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの」と書いてありますが、そこには例として「浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食い」を挙げています。

間接的に自分を損なう行為で典型的なものは、アルコールへの耽溺や薬物の乱用です。場当たり的なセックスやスリルだけを追い求める恋愛、万引きも含まれます。どちらかといえば女性によくあるのは過食や買い物依存、どちらかというと男性によく見られる命の危険と背中合わせのスポーツや無謀運転への熱中も、それに当たります。

通常の場合、人は衝動をコントロールしたり、欲望をその場で満たすことをおさえ、それを先延ばしすることができます。それは長い目で自分を損なわないように配慮するからです。

ところが、こうした衝動を抑えたりコントローすることが困難な人もいます。

特に長い時間、不安や空虚感を感じて苦しんだ場合は、目の前の楽しい活動をすることは、このうえない気分転換になります。

境界性パーソナリティ障害の人の場合、心の長く空虚感を抱えており、また気分が変わりやすく落ち込んでうつ状態にあることも頻繁に起こります。

そうした場合、むちゃ食いや嘔吐、見境のない性交渉、万引き、脅迫的な買い物、飲酒、物質依存等の衝動的な行為によって、どうしようもない空虚感を満たしたり、あるいは自分が自分であるという自我同一性を確認しているように見えます。

また、万引きや脅迫的な買い物、むちゃ食いは、境界性パーソナリティ障害の人が抱えている深刻な愛情飢餓を癒そうとする行為でもあるようです。

人は幼い時に母親から母乳などを与えられてきました。それはたんなり摂食行為ではなく、愛情と安心を与えてもらっていたのです。何かを買ってもらうことも、愛を与えてもらっていることを意味しました。ですから、過食や万引き、脅迫的な買い物は、愛情飢餓を癒すための代替行為となるのです。

つまりそれによって深刻な愛情飢餓感を癒しているともいえるのです。裕福な家の子が、使い切れないほどの日用品を買いこんだり、繰り返し万引きしていたりすることがあるのも、こうした理由かだと言われています。

②強烈な自己否定感

しかし、こうした行為は、確実に自分を損なってしまう行為です。ゆえに、その根底には自己破壊衝動があります。

自己破壊衝動の理由は、深い自己否定の感情と罪悪感です。

「愛を与えられない自分」=「ダメな愛を受けるに値しない自分」
という強い思い込みが、そこにはあるように思います。

 精神科医の岡田尊司氏は、境界性パーソナリティ障害の人には「自分という存在を跡形もなく消し去ることを、心の底から望んでいる」ことがあるといいます。

自殺企図、自傷行為、間接的な自己破壊、これらの奥には根深い自己否定感から来る自己破壊衝動があるのです。

こうした自己否定感は、しばしば薬物乱用や性的な無軌道、命知らずの行動、窃盗のような法律を犯す行為に走らせます。「自分を値打ちのない存在と思っているから、自分をとても安っぽく扱ってしまう」のです。

また、境界性パーソナリティ障害の人は、そうした自己否定感見捨てられ感のために、心の空虚さを感じたり、気分が沈みやすくなります。

それを防ぐために、「常に自分を紛らわす刺激剤」を必要とします。自傷行為や自分を損なう逸脱した行為が、彼らの「気分を高揚させ、落ち込みや空虚感から救っている」のです。

強烈な自己否定感は、強い見捨てられ感と並んで境界性パーソナリティ障害を理解する最重要のキーワードです。

彼らは自分が嫌いです。「自分という存在を、つまらない、劣った存在と過小評価するばかりか、しばしば、汚らわしい、醜い、情けない、存在する価値のないものと考えている」のです。

どうしてそうした自己否定感が心の中に根付いたかといえば、幼いころに、愛情の充足や安心が脅かされた体験に根差していることが多いのです。

ですから、幼少期に形成できなかった基本的安心感を、どこかで作り直す経験が必要になるのです。

 (参考図書)岡田尊司著『パーソナリティ障害』PHP新書

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境界性パーソナリティ障害1…愛情飢餓の苦しみを抱えて

1.決して珍しくない症状



境界性パーソナリティ障害は、最近増えつつあるのですが、対人関係が難しいという特徴があるので、大変厄介です。 リストカットを繰り返したり、自殺の企てを何度もしたり、摂食障害で拒食症や過食症に悩んだり、家庭内での親への暴力、援助交際などの性的逸脱などなど、こうした激しい行動の背景には、往々にして境界性パーソナリティ障害が潜んでいます。これに薬物への依存が加わることもあります。
そのために境界性パーソナリティ障害では、本人の苦しみが激しいだけでなく、家族やその周囲の人が振り回されてへとへとになっていくことが少なくありません。


特に境界性パーソナリティ障害への対応で難しいのは、通常の場合、その人を熱心に支えようとすればするほど、症状が悪化していくことです。親身に支えてくれる人に対して、どんどん要求をエスカレートさせたり、攻撃的で衝動的になったり、自殺の企てを繰り返すことも少なくありません。そのために親身になって支援しようとした人自身が傷つくことも多いのです。
アメリカではこの障害を持つ人は全人口の2パーセントもあり、さらに精神科外来患者の11%、入院患者では19%が境界性パーソナリティ障害の要素を持っていると言います。日本もそれに近づいてきているといわれています。



青年期に発症することが多いので、若い人の間では境界性パーソナリティ障害を持つ人は、大幅に割合が増えることになります。なかでも女性に多くみられ、80%をしめます。男性も20%を占めていて、性差がなくなっている現在では、男性が発症するケースも増える傾向があるようです。

2.見捨てられ不安と愛情飢餓

境界性パーソナリティ障害を持つ人は感情がとても不安定です。

たとえば、片時も離れたくないほどの恋人だったはずなのに、突然鬼のような怖い顔になり怒りまくる。たんなるお友達のはずなのに、夜中まで突き合せておきながら、翌日はがらっと態度が変わり激しく罵倒する、などなど・・・。

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境界性パーソナリティ障害7…特徴(4)怒りのブレーキが効かない

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境界性パーソナリティ障害の人も私たちも、もっている感情に違いはありません。ただ違うのは、私たちより「物事を強烈に感じ、より激しい形で反応し、自分自身の感情や行動をうまくコントロールできない」ということです。
境界性パーソナリティ障害の人の怒りは激しく、予測不可能で、筋道を立てて話をしても抑えることができません。大雨の後の鉄砲水や地震や、晴れた日の雷のようなものです。現れるのと同じように、消えるのも突然です。

もう聞いているしかないほど怒りの激流となるので、相手をする人は疲れ果てて行きます。仕方がないから感情をなだめるために、境界性パーソナリティ障害の人の言うままになってコントロールされている家族があります。これは非常に多くあるケースです。この場合、家族の心の中には、出すことのできない怒りが蓄積されていくので、家庭の中の空気が非常に冷たくとげとげしいものとなりがちです。 もっとも、境界性パーソナリティ障害の人の中には、自分の怒りを全く表現することができないという正反対の問題を抱えている人もいます。怒りがないのではなく、「少しでも怒りを表したらコントロールを失ってしまうとか、わずかな怒りでもそれを向けた相手が仕返しをするのではないかという恐怖心を抱いている」からです。怒りのブレーキが壊れているという感覚では共通しています。

通常このタイプの人は、怒りだけでなく、あらゆる感情が激しくて、それを抑えるブレーキが壊れているように感じています。それは彼らが痛みに対して、非常に過敏な心を持っているからです。ある専門家はこれを、全身の9割に重度の熱傷(やけど)を受けているような状態だといいます。「感情という皮膚がなく、わずかに触れたり、動いたりするだけでも、彼らは苦痛に悶えるのです」。ですから制御できなくて激しい反応が起きてしまうのです。
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「理想化」というのは、「最高だ!」「こんな人に出遭えたのは初めて!」と感じて、相手を理想の人だと思いこむことです。


境界性パーソナリティ障害を持つ人は、自分を支えてくれ、愛情飢餓を癒してくれる人を常に求めています。ですから、これはという人物に巡りあえると、急速に相手に対する期待が高まります。そして「この人こそ、自分が求めていた人だ!」その思いが膨らむと、極度に理想化したり、万能な存在であるように思いこみやすいのです。

このタイプの人は、心の深いところで母親や父親の代理を相手に求めています。ですからその欲求を満たしてくれる人に出会うと、どんどん依存を深めていきます。

さらに境界性パーソナリティ障害をもつこのタイプの人は往々にして恋愛感情に入っていきやすいので、理想の相手に見えて恋心に火がつくことも少なくありません。しかし、これはこの人の中にある理想の父親もしくは母親の投影として、理想の恋人に見えているのであって、本当の恋心とはいえません。


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